貫井徳郎「妖奇切断譜」
今年読了した本53冊目、貫井徳郎:著「妖奇切断譜」講談社文庫:刊。
…生活にゆとりが出てくると本を読むってことでしょうか。「カワイイもの~」を読み終わった後いっきにこの本を読破。…しかし、テンポ良く読める本ってミステリーばっかりかおいら?(ああ、多分ファンタジーも大丈夫だな、と自己完結)
「九条&朱芳シリーズ第2弾」と文庫の帯にはあったんだけど、まあ、ミステリーなら探偵役とその周り数人だろうし、内容的にはそんなに前の巻を引いていないだろう、と読み始めたわけです(「夏と冬の奏鳴曲」以降の如月クン3部作で学習していませんね…)。
屍の山だった。
…えーと。話が始まる第1行目第1文がこれですか?…まさか屍の山を築いた犯人を捜せとか言うんじゃないだろうな(汗)。
読み始めた時の直感は外れた訳ですが(登場人物の過去の情景でした)、…なんというか、濃いですよこれ。時代は明詞(めいじ≒明治)、文明開化の新しさと江戸時代から変わらない因習や精神文化、戊辰戦争の傷みのないまぜになった世界観。美女ばかりを描いた評判の錦絵のモデルが次々と殺されるという連続殺人事件も濃いっちゃー濃いけど、さらに被害者がばらばら死体で何故か稲荷(いなり)で発見されるという煮詰め方。濃いですよこれ…。
登場人物も、なかなかの人物揃い。「語り手である公家の三男坊、実は父や兄からの鼻つまみ」「病弱でほとんど家から出ない探偵役、剣についてはなかなかの使い手でもと医学生」「武士道が微妙にブレンドされた足フェチの元幕臣、現在は神社で大道芸人」「役者と見まごうほどの美男子で女たらしの画家の弟子」「気は優しくて力持ちの連続殺人犯」…やっぱ濃いですよこれw
なんか人物紹介でほんのりネタばれ風味なんですが、血とか腐臭とか異常な性癖とか生育歴による心の歪みとか、そういう要素がこれでもかと盛り込まれてるので退屈しません。お好きな向きには是非どうぞ~。
…しかし、つっこみが2点ほど。まずひとつめは「トリックじゃないじゃん!」ってところ。一見不可能に見える犯罪、それを可能にするからくりをトリックと定義するならば、「死体をばらばらにする」も「稲荷に捨てる」もトリックとは言えないような…。犯人が誰かを特定するとか、稲荷に捨てられている意味を読み解くとか、なぜばらばらにするのかその動機をつきとめるという意味では、もちろん面白い謎として読んだんだけれども、帯にあるような「究極のばらばらトリック」ってのは、広告に偽りありなんじゃないのかなあ。…もちろん、登場人物が妖しい人揃いなので、誰が何のために殺人を繰り返すのかという点は最後まで興味を引っ張られましたし、意外な黒幕に「おお!」とも思いましたとも。
もうひとつの突っ込みは、登場人物以外に前作を引いてるとは言えないような作りなのに、最後の最後で「次巻ニ続ク」と引きが入っていること。…事件解決してるじゃん!ラストのエピソードって関係ないじゃん!いいのこれ~!?
…というわけで、面白かったので、前作を探して読むことに決定~。ふふふ。…しかし、現代日本の設定じゃ絶対破綻すると思われるこのお話、「明詞」的異世界(そこまでいうと語弊が?)で正解なんだろうなあ。えーと、「巷説百物語」辺りが好きで、しかも妖怪が実際には出てこなくてもOKな人にはおすすめ。如月烏有のあの感じに耐えられる人なら、実はあんまり行動していない九条君の「家柄や格式と文明開化の気概のジレンマ」にも耐えられるかなあ(いや、こっちの味付けはけっこう軽いけど)。
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73199/5229153
この記事へのトラックバック一覧です: 貫井徳郎「妖奇切断譜」:

コメント